自社のサービスや商品に名前を付けたとき、「この名前、商標を取っておいた方がいいのかな」と一度は考えると思います。
ただ、調べ始めると手が止まりやすいんです。
- 区分がたくさんあって、自社の仕事がどれに当たるのか分からない
- 願書に書く「指定役務」の言い回しが独特で、何を書けばいいか見当がつかない
- 似た名前が先に出されていないか、どこまで調べれば足りるのか分からない
- 専門家に頼むほどなのか、自分でやれるのか、決める材料がない
先に答えを書きます。区分の候補を絞る・指定役務のたたき台を作る・似た名前を一次調査する。ここまではAIでかなり進みます。 一方で、先に似た商標が出されていた時の判断は、AIを使っても消えません。
この記事では、Gemini Notebook(旧NotebookLM)を使った下準備の進め方を紹介します。そのうえで、当社が自社のサービス名で商標の方針を一晩で切り替えた時の話と、AIの案と社長の決定を分けて残した方法、自分で進めるか専門家に頼むかの目安をまとめました。
Gemini Notebook(旧NotebookLM)で、特許庁の資料を読みながら区分を絞る
Googleは2026年10月23日、Gemini Notebook(旧NotebookLM)をGeminiアプリの「接続済みアプリ」として使えるようにしたと発表しました(Google Workspace Updates)。Geminiとのチャットで「@Gemini Notebook」と入れると、ノートブックを作る、資料を足す、メモを保存する、保存した資料に基づいて答えをもらう、といったことがその場でできます。
商標の下準備に当てはめると、こう変わります。
| 作業 | これまで | Gemini Notebookを使うと |
|---|---|---|
| 区分を調べる | 特許庁の公開資料を開き、当てはまりそうな所を自分で探して読む | 公開資料をノートブックに入れ、自社の仕事を説明して候補を聞く。答えがどの資料に基づくかも確かめられる |
| 指定役務を書く | 似た会社の例を探して、言い回しを見よう見まねで写す | 資料にある言い回しから、自社に近いものを抜き出してもらう |
| 途中の候補を残す | 別のメモ帳にコピーして貼る | チャットの中で、候補をそのままノートブックのメモに保存する |
使うときのコツは、質問の前に「自社が何をどう届けているか」を一段落で書いて渡すことです。
たとえば同じソフトの仕事でも、誰でも申し込める月額のサービスなのか、会社ごとに作って納めて保守するのかで、選ぶ言い回しが変わってきます。ここが曖昧なまま聞くと、AIはそれらしい候補を並べてくれますが、自社に合っているかは分かりません。
「取らない」と決めた翌日に、1区分で進めると決めた
当社でも、自社のサービス名で同じ所を通りました。
10月29日の時点では、このサービス名の商標は「取らない」と決めていました。同じ日の一次調査で、同じ読みの名前が先に出願されていることも分かっていました。
翌30日、特許庁が示している出願と登録の費用を、1区分の場合で説明してもらいました。その場で私が返したのがこの一言です。
「AIあるんだから1区分でいきましょう!」
下準備を自分たちで進められるなら、区分を広げずに1つで出せばいい。そう考えて、前日の方針を切り替えました。
そこからAIが用意したのが、次の案です。
- 候補の区分を第42類に絞った
- このサービスは誰でも使える月額の形ではなく、会社ごとにプログラムを設計・作成し、保守して届ける方針だったので、それに合わせて指定役務のたたき台を作った(「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供」)
- 名前そのものを守るのが目的なら、文字だけで出す「標準文字」1件を第一候補にした
| 項目 | AIが準備した案 | 社長が決めたこと・まだ決めていないこと |
|---|---|---|
| 区分 | 第42類を候補に | 1区分で進める(決定) |
| 指定役務 | 設計・作成・保守と提供を軸にしたたたき台 | 実際の提供範囲と照らした最終確認はこれから |
| 出し方 | 標準文字1件が第一候補 | 文字にするか図形にするかは未定 |
| 提出・納付 | ― | 書類の提出も支払いも、まだしていない |
AIを使っても、似た名前が先にある事実は変わらない
ここは、はっきり分けておきました。
区分を1つに絞っても、AIで願書の言い回しを整えても、前日に見つかった同じ読みの先願はそのまま残ります。なので当社では、この商標を「取れるもの」としては扱っていません。
AIが作るたたき台は、手が止まる所を一気に進めてくれます。ただ、先に出された商標と似ているかどうか、自社の提供範囲と書いた言葉がずれていないか。この2つは、たたき台が整っても人が見る所として残ります。
ポイント AIに任せられるのは、区分の候補・指定役務の文案・似た名前の一次調査まで。先に似た商標が見つかった時の判断と、自社の提供範囲との最終確認は、人の仕事として残ります。
下書きと判子を分けて、会社のノートに残す
この件を、当社では「会社の記憶」に残しました。会社の記憶は、会社で決まったこと・仕事のやり方・案件の経緯を、どのAIからも読める形で1か所にまとめたノートです。AIとノートはMCPでつないでいます。MCPは、AIと外の道具をつなぐ共通の差し込み口のようなもので、つながったAIは会話の途中で会社のノートを読みに行き、決まったことを書き足します。
例えるなら、AIが書くのは下書きで、判子を押すのは社長です。下書きと判子が同じ紙に混ざっていると、後から見た人には、どこに判子が押されたのか分かりません。
そこで今回の記録は、こう分けて残しました。
- 前日の「取らない」は消さず、「翌日に1区分で進める方針へ変えた」とつないで残す
- 決めた人と、その理由(「AIがあるから」)を一緒に書く
- 区分・役務・標準文字の話は「AIの案」として、決定とは別に書く
- 未定のこと(文字か図形か、具体的な役務、納付の仕方、提出)と、残る確認(同じ読みの先願)を並べておく
こうしておくと、後日どのAIに願書の続きを頼んでも、AIはまずこのノートを読み、「1区分で進めると決めた。ただし似た先願の確認が残っている」という前提から始めます。案が決定のような顔をして独り歩きしない。ここが一番の効き目だと思っています。
こうした「決めたこと」と「案」の分け方は、商標に限らず見積もりや社内の決まりでも同じです。業務改善のご相談でも、ここから一緒に整理することが多いです。
自分で準備するか、専門家に頼むかの目安
明日からでも試せる残し方は、この3つです。
- 決めたこと・その理由・まだ決めていないことを一組で書く。 商標なら「1区分で進める/理由/未定の項目」です
- 方針を変えたら、前の決定を消さずに「○日に変えた、理由は…」と足す。 前の方針を覚えている人も迷いません
- AIが出した候補には「案」と書いておく。 判子が押された所と押されていない所が、一目で分かります
そのうえで、自分で進めやすい会社と、早めに専門家の目を入れた方がいい会社の目安です。
自分で下準備を進めやすい会社。 守りたいのは自社の名前で、提供の仕方(何を・誰に・どう届けるか)を自分の言葉で説明できる。公開資料を読んで候補を絞る時間を割ける。こうした会社なら、AIでたたき台まで十分に進められます。
専門家の判断が要る会社。 一次調査で、同じ読みや似た名前が先に出されていると分かった。どの範囲まで守るべきか、社内で決めきれない。この段階は、AIの案をいくら整えても進まない所です。
私自身、AIで変わったのは「やるかやらないか」を決める手前が軽くなったことだと感じています。前日に「取らない」と決めたことでも、自分たちで下準備できると分かれば、翌日に決め直せました。
まとめ 商標の区分選び、指定役務の文案、似た名前の一次調査は、AIでかなり進みます。似た先願との判断と提供範囲の最終確認は人に残るので、AIの案と社長の決定を分けて、理由ごと会社のノートに残しておくと、続きを誰が・どのAIが進めても同じ前提から始められます。
御社なら、どの決定から理由を残しておくと楽になるか。気になった時にお問い合わせから声をかけていただけたら、一緒に整理します!


