「うちの業務、どこから改善したらいい?」。ChatGPTにそう聞いてみたことがある社長は多いと思います。
返ってくるのは、だいたいこんな答えです。
- 定例会議を見直して、時間を短くしましょう
- 情報共有の道具を一つにまとめましょう
- 繰り返しの作業はAIや自動化に任せましょう
どれも間違ってはいません。ただ、読み終わっても「で、うちは明日どこを直せばいいの?」が残る。そんな経験、ありませんか。
先に結論を書きます。答えが一般論に寄るのは、AIの腕より、渡している材料の問題です。 この記事では、ChatGPTのプロジェクトとメモリーで今できることを「月の振り返り」の場面で紹介します。そのうえで、会社の記録から直す所を見つけるには何が要るのかを、当社で実際にあった出来事と一緒にお伝えします。最後に、明日から残せるメモの形と、道具の分け方の目安をまとめました。
ChatGPTのプロジェクトとメモリーで、月の振り返りはここまで楽になった
月末に、今月の売上や問い合わせの数、現場で困ったことを振り返る。この相談をChatGPTにする場面で考えてみます。
少し前までは、新しいチャットを開くたびに、業種や扱っている商品、先月の話を毎回貼り直していました。説明するだけで一仕事です。
今はプロジェクトを使うと、チャットと資料を一つの箱にまとめておけます。月次の数字の表や、先月の振り返りのチャットを同じプロジェクトに入れておけば、続きから話せます。箱ごとに「この会社の前提」を書いた指示を置いておくこともできます。
メモリーは、会話の中で伝えた好みや前提(報告は箇条書きで、うちは小売業、など)を覚えて、次の会話に生かしてくれる機能です。
さらに2026年10月7日、OpenAIはChatGPTにGPT-6とIntelligent UIを導入したと発表しました。質問に合わせて、文章に加えて図や比較表、その場で使える道具などを組み合わせて答えてくれるものです(ChatGPTのリリースノート)。振り返りの数字を渡せば、先月との比較を表で見せてもらう、といった使い方がしやすくなりました。
振り返りの文章の下書き、社員に向けた説明、施策の案出しや壁打ち。このあたりは本当に得意です。
ポイント 前提を毎回説明し直す手間は、プロジェクトとメモリーでかなり減りました。文章を作る・考えを広げる・数字を表にする、はChatGPTに任せてよい所です。
答えが一般論に寄るのは、仕事の流れが材料に入っていないから
では、なぜ「何から変えるか」になると、急に一般論になるのか。
プロジェクトもメモリーも、覚えているのは「会話で伝えたこと」と「入れた資料」です。見積もりを出すまでに社内で何往復したか。どの工程で、いつも誰かが誰かに聞きに行っているか。こうした仕事の流れは、誰かが書いて渡さない限り、AIの手元にありません。
材料がないと、AIは世の中でよく言われる改善策から答えを組み立てます。健康診断の数値を見せずに、医者に「体にいい習慣は?」と聞くようなものです。早寝早起き、野菜を多めに。正しい答えは返ってきます。でも、あなたの体のどこを直すかは分からない。
公平に書いておくと、日々のやり取りの記録をこまめにプロジェクトへ入れていけば、ChatGPTでもかなり具体的になります。難しいのは、それを毎日、誰が書いても同じ形で続けることです。図や表で答えてくれるようになったぶん、材料が薄いままでも、もっともらしい図ができてしまう点も気をつけたい所です。
自分たちの画面に、その一般論が並んでいた日
当社では、この「材料」を会社の記憶にためています。会社の記憶は、会社で決まったこと、仕事のやり方、案件の経緯を、どのAIからも読める形で1か所に残したノートです。AIとはMCPでつないでいます。MCPは、AIと外の道具をつなぐ共通の差し込み口のようなもので、つながったAIは会話の途中で会社のノートを読みに行き、決まったことが出れば書き足します。使うAIが違っても、読み書きするノートは同じです。
このノートを他の会社にも使っていただけるよう、画面を作っている途中の話です。
10月末、開発中の画面に「どの仕事から、変えていく?」という欄がありました。ためた記録をもとに、改善する仕事の候補を見せる場所です。そこに並んでいた文を読んで、私はこう伝えました。
「今表記されている内容は地に足がついていない、表面上のAI作業効率化のサンプル文字を見ている印象です。」
記録をためているのに、出てきたのは、さっきのChatGPTの一般論と同じ顔をした文でした。続けて、こうも言っています。
「せっかく記憶を保持しているのに、業務の可視化をして、ここで会話が集中しているからここを直す、みたいなワークフローを見せたり、困っていた具体例などを出し、どう改善できるかの改善例を図で見せる。これくらいしないといけない。」
その場で決めた方針は、次のとおりです。
| 項目 | 画面に出ていたもの | これから出すと決めたもの |
|---|---|---|
| 中身 | どの会社にも当てはまるAI効率化の文 | ためた記録から描く、その会社の仕事の流れ |
| 直す所の決め方 | よくある改善策から選ぶ | どの工程で会話や確認が集まっているかを見る |
| 根拠 | 示せない | 実際に困った出来事 |
| 見せ方 | 文字の箇条書き | 今の流れ → 問題の箇所 → 改善後の流れを図で |
そのために、判断の期間を2か月とることにしました。期間が来たらAIに文を書かせて出す、という待ち時間にはしません。記録から仕事の流れをつかみ、困りごとを見つけ、直し方を設計するための時間です。
私は、記録をためる値打ちは、AIに文章を出させる所より、直す所を決めて直し方まで描ける所にあると考えています。一般論なら、ChatGPTで十分に出せます。わざわざ会社のノートを作るなら、そのノートからしか出てこない答えを出したい。2か月は、そのために要る時間だと判断しました。
ChatGPTと会社の記憶、頼む所の分け方
どちらか一方に寄せるより、得意な所で分けて頼むのが現実的です。
| 頼みたいこと | ChatGPT(プロジェクト・メモリー) | 会社の記憶 |
|---|---|---|
| 文章を作る | 振り返りの下書き、社員向けの説明、提案の文案 | 下書きの元になる事実や決めた理由を渡す |
| 考えを広げる | 壁打ち、案出し | 過去に決めたことと、その理由を読ませる |
| 何から直すか決める | 渡した材料の範囲で考える | ためた記録から、確認が集まる工程と実際の困りごとを探す |
| 図や表にする | 渡した数字や流れを、見やすい図や表にする | 図の元になる仕事の流れを、記録から用意する |
直す所は記録で決めて、説明や文案はChatGPTで整える。この組み合わせなら、それぞれの得意な所が生きます。自社の仕事の流れのどこで確認が集まっているか、一人で見つけにくい時は業務改善のご相談として一緒に見ていくこともできます。
明日から残せる「困りごとメモ」と、向く会社・向かない会社
仕組みがなくても、困った出来事の残し方を変えるだけで、AIに渡せる材料は変わります。困ったことがあったら、次の3つに分けて一行ずつ書いておくのがおすすめです。
- 事実:何が起きたか(例:見積もりの金額確認で、営業と現場の間を何度も行き来した)
- 課題の仮説:たぶんここが原因(例:値引きの基準が決まっていない)
- 足りない情報:決めつける前に確かめたいこと(例:他の案件でも同じことが起きているか)
もう一つ。会話や確認が多い所を、そのまま悪い所と決めつけないことです。丁寧に確かめているだけの工程もあります。同じ形の困りごとが何度か出てきてから、直す候補にする。これだけでも、一般論に引っ張られにくくなります。
ためたメモをプロジェクトに入れてから相談すると、答えの出発点が、世の中の改善策から御社の出来事に変わります。
会社の記憶が向く会社
- 同じ確認や問い合わせが、社内で何度も繰り返されている
- 仕事の相談が、チャット・電話・AIとの会話など、あちこちで起きている
- 改善を一度で終わらせず、記録を見ながら続けたい
ChatGPTのプロジェクトで十分な会社
- 今は文章づくりや案出しを楽にしたいのが中心
- 仕事の記録がまだほとんどなく、ためる所から始める段階
まとめ 業務改善の答えが一般論になるのは、仕事の流れがAIの材料に入っていないからです。文章はChatGPTに任せ、直す所は会社の記録から決める。記録をためる値打ちは、改善を設計できる所にあります。
御社なら、どの困りごとから残すと直す所が見えてくるか。一緒に整理します。気になった時にお問い合わせから気軽に声をかけていただけたら嬉しいです!


